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村上:
私は米欧の投資家と話す機会が多いのですが、彼らの多くは中国経済の先行きに懸念を抱いています。不動産融資の規制などといった引き締め策が急激に進められている印象があり、今後も慎重に景気回復を果たしていくという中国政府のスタンスはあくまで表面的なものではないかと訝る投資家もいるようです。
周:
金融危機は中国にも大きな影響をもたらし、政府はそれに対処すべくタイムリーに政策を打ってきました。そして、積極財政と緩やかな通貨政策を打ち出したところ、2009年第1四半期こそ大幅な落ち込みを示したものの、その後は大幅な回復が見られました。ただ、ギリシャの問題もありますし、まだ世界経済は完全なる回復基調に入ったとは言いがたく、これからも中国はしっかりと経済をコントロールしていかなければなりません。
また、中国の国情に合った方法で対処していくことも求められます。中国は発展途上国で、世界の5人に1人が中国人に該当するように人口が多く、56もの多民族国家で格差も大きいわけですから、それらの事情を踏まえた対策が必要なのです。さらに社会主義下の市場経済とは、「資本主義諸国の市場経済の普遍的なルールの中でよい部分だけを採り入れるもの」と私は理解しています。もっとも、かといって対外政策に関してはこれからも大きな変化はなく、我々はつねに海外からの投資を歓迎しています。
そのためにも安心して投資できる市場を作り上げていかなければならず、ガバナンスの徹底などを進めていく必要があるでしょう。香港市場に上場している中国の銀行の株価は、米国の銀行よりも1ケタ小さいのが実情です。逆から言えば、中国の銀行株には非常にポテンシャルがあると私は考えています。確かに今は安いが、だからこそ20年後、30年後に子どもや孫に資産を残せることができるのではないでしょうか?
村上:
90年代以降の日本の失敗は、金融の自由化を性急に進めすぎたことが一因だと私は捉えています。ここまで中国は経済を巧みにコントロールしてきましたが、やはりこうした諸外国の過ちを“反面教師”としてきたのでしょうか?
周:
改革開放政策が進められてから30年しか経っておらず、中国はまだまだ若い市場です。一歩一歩、着実に成長していかなければなりません。中国も似たような問題を抱えており、諸外国の失敗は我々にとって大きな教訓となっています。
今回の金融危機については、①過度な金融イノベーション、②監督・管理の欠如、③リスクに対する教育の欠如――といった3つの原因が考えられるでしょう。このうち、中国において①はまだまだ進んでおらず、堅実に金融イノベーションを推進していくべきでしょう。②については欠如とまでは至らないものの、さらなる強化を図る必要があります。③に関しても、当然ながらいっそう力を入れる分野だと言えます。
なお、かつての日本の不動産バブルではもっぱら民間企業が買いの主体で、国はそれを厳しく規制することができませんでした。しかし、中国企業の多くは国が大株主であり、意のままにコントロールすることが可能です。その点は社会主義の部分のメリットだと言えるでしょう。いずれにしても、中国は今後も継続的に成長し続けていかなければならず、そのためには先進諸国の教訓を大いに生かしていくべきだと考えております。
村上:
なるほど。今日は大変勉強になりました。ありがとうございます。
(上記対談は2010年7月16日に行いました)
村上尚己の対談終了後コメント
「過去20年の中国経済の発展を、現場の近くで支えてきた周氏との対話から多くのことを学ぶことができました。印象深かった点は、世界経済への影響が強まる中国について、非常に客観的にその課題を含めお考えになっていることでした。
世界2位の経済大国となっても、一人当たりGDPの水準は低いことを周氏は何度も強調されていましたが、逆に言えば、まだまだ成長余地が大きいことを意味します。周氏の言葉には、中国経済の将来への強い自信を感じることができました。
また、中国の金融市場の発展に関しても、前向きなお考えを持っていることも垣間見えました。経済の持続的成長には金融市場の発展が必須条件になりますが、人民元の取り扱いを含め、中国独自の金融市場改革が今後ダイナミックに続きそうです。我々日本人が投資を行う上で、引き続き中国からは目が離せません。」
1.改革開放30年の変化とは
2.未だ中国は発展途上
3.他国の教訓を生かし継続的成長へ
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