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夏休み こども教室
チーフ・エコノミスト 村上尚己(むらかみ なおき)がカンタン解説
「デフレってなんだ?」

最近、「デフレ」という言葉をよく耳にします。なんでも、今の日本は深刻なデフレとか。そもそも、インフレやデフレってどんなもの?デフレだとなぜ困る?

今回は夏休み企画として、チーフ・エコノミストの村上尚己がお子さま向けにカンタン&分かりやすくデフレについて解説します。お父さま、お母さまもご一緒にお楽しみください。



デフレは日本だけが陥っている、とても珍しいこと



皆さんこんにちは。マネックス証券の村上です。
私はエコノミストとして、各国の経済状況を観察しながら、株式や為替市場の分析を日々行っています。エコノミストは日本を中心に経済動向を観察しながら、これから株や為替レートがどう変動するかを考える、楽しくそして刺激的な仕事です。

さて、今回は日本経済の現在の状況を少し考えてみましょう。最近の日本は働く人のお給料が増えず、しかも身の回りのモノの値段も下がり続けているように見えます。このようにモノの値段やお給料が持続的に下がり続けることを、「デフレ」と呼びます。実はこのデフレという状況は、現在日本だけが経験している、とても珍しいことなのです。

日本政府もこのデフレを退治しようと、これまでいろいろな対策を行っていますが、なかなかデフレから抜け出すことができません。この経済のデフレ状況をどう考えるか、今後どう変化していくかは、日本経済や日本株の動きにも密接な関係があります。ここでは、日本だけが陥ったこのデフレについて、一緒に考えていきましょう。



まず「インフレ」と「デフレ」が何か知っておこう



モノの値段を10年前と比べると、値上がりしたモノもあれば、値下がりしたモノもあるでしょう。

たとえばガソリンは10年前より値上がりしている一方、Yシャツなどは値下がりしているようです。では、社会全体としてモノやサービスの値段はどのように変化しているのでしょうか?

社会全体のモノやサービスの値段が上がることをインフレ(インフレーション)、これとは逆にモノやサービスの値段が下がることをデフレ(デフレーション)といいます。

インフレとデフレをお金の価値を基準に考えてみると、ちょっと違った見方ができます。

モノの値段が上がるインフレは、お金の価値がこれまでに比べて下がったともいえます。一方、モノの値段が下がるデフレは、お金の価値がこれまでよりも上がったと考えられます。





いつから日本はデフレなのか



ニュースや新聞は、「日本はデフレが続いている」と報じています。では、いつから日本ではデフレが続いているのでしょうか?インフレかデフレかを判断する考え方はいろいろありますが、ここでは代表的な2つの指数を用いて説明します。

(1) 消費者物価指数(しょうひしゃぶっかしすう)

一般的な消費者が買うモノやサービスの価格動向を示したものが「消費者物価指数」です。右の図では前年比がどのように推移してきたかを確認できます。

変動の大きな食料品やエネルギーなどの価格を除いて考えると、日本では長い間前年比マイナス(デフレ)が続いていることが分かります。

(出所)ブルームバーグ

(2) GDPデフレーター

日本国内でモノやサービスによって生まれたすべての付加価値の価格動向を示すのが「GDPデフレーター」です。

右の図を見ると1997年に消費税の増税効果(※)によりGDPデフレーターが上昇しているものの、概ねマイナス圏での推移を続けており、長い間デフレが続いていることが分かります。

(出所)ブルームバーグ

上の2つの指標は、物価が上昇(インフレ)すれば大きくなり、物価が下落(デフレ)すれば小さくなる指標です。1997年4月に増税された消費税(※)の影響を大雑把に調整すれば、どちらの指標からも物価が下落していることが分かるでしょう。

特に、GDPデフレーターでは1995年頃から前年比マイナスが続いており、日本のデフレが95年ごろから続いていることが分かります。

(※) 消費税は1997年、それまでの3%から現在の5%に増税されました。



デフレはなぜ悪いのか



モノが値下がりするといっぱい買い物できるから、デフレっていいことなんじゃないの?

一見、デフレはおトクに見えるかもしれません。ただし、それは違います。

たとえば、ある町の八百屋さんが野菜の安売りを行ったとします。町の人たちは安い値段で野菜を買えますが、いくら安いからといってもこの町の人たちが食べる野菜の量はそれほど大きく変わらないでしょう。

そのため、この八百屋さんの売り上げは野菜の値段が下がった分、少なくなってしまうことも考えられます。八百屋さんの売り上げが減って儲からなければ、八百屋さんで働いている店員さんのお給料も下がるかもしれません。

お給料が下がれば、この店員さんは節約のためモノを買わなくなることもあるでしょう。あるいは儲からなくなった八百屋さんは店員さんを雇い続けられなくなるかもしれません。

これは八百屋さんに限ったことではありません。多くの会社や商店でも同じことが言えます。社会全体でモノやサービスの値段が下がりデフレが起きると、多くの人々のお給料が下がる原因となり、雇用も減少して働きたいのに働けない人が増えるなど、世の中のお金の流れが悪くなるのです。



下の図は、前の年よりもお給料がどれぐらい増えたり減ったりしたかを表した「名目賃金総額(めいもくちんぎんそうがく)前年比」の推移です。この図からも分かるとおり、日本人のお給料は年々減っていて、先ほどの消費者物価指数やGDPデフレーターで確認できたデフレ時期と重なっていることが分かるでしょう。このように、デフレは私たちの生活に密着したとても重要な問題なのです。



(出所)厚生労働省



過去のデフレの経験



お給料が減ったり、失業が増えたり、デフレって怖いんだね。
これまでにもデフレになったことってあるの?

歴史的に見ると、1929年のアメリカ発で始まった世界恐慌時に大規模なデフレが起きました。ニューヨーク株式市場の大暴落から始まった世界的な不況で、当時のアメリカの財政状況は悪化。アメリカの失業率は約25%まで上昇し、4人に1人が働きたいのに仕事がないという危機的状況が起きたのです。

ただし最近のデフレは珍しく、戦後、デフレが続く国は日本だけだと言われています。なお、デフレが続くと国の収入である税収も減ってしまいます。このままデフレが続くと日本は他の国に比べて収入の少ない国となり経済的に後退するだけでなく、日本国内でも雇用が減ってしまうなど、深刻な状況にあると言えます。



デフレを脱出するには



このままデフレが続いちゃうと大変!
日本がデフレを脱出するにはどうしたらいいの?

デフレを解消する方法には、さまざまな意見があります。

その中でも代表的なのが、「世の中に出回るお金の量を増やす」という意見です。その国の中央銀行(日本の場合は日本銀行)は、世の中のお金の流れを管理することができます。

また、政府は「○○購入補助策」や「○○減税」などの政策を行うことで、国民がモノやサービスを買いやすくすることができるのです。このように、世の中のお金の流れをよくすることで、デフレは解消され、お給料の減少や雇用の減少を食い止めることができると考えられています。


 保護者の皆さまへ

ここまで駆け足で見てきたように、日本が陥ったデフレというのは非常に深刻な経済現象であり、日本株だけが長期低迷が続いていることとも密接に関係があります。今後の投資判断のご参考になれば幸いです。

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村上 尚己(むらかみ・なおき)
東京大学経済学部を卒業後、生命保険会社、シンクタンク、外資証券にて内外経済・金融市場の分析に従事。2003年よりゴールドマン・サックス証券株式会社においてシニア・エコノミストとして、日本経済の予測全般を担当。
内外機関投資家へのレポート作成・内外投資家へのマーケティングを通じて、30代半ばの年齢で日経ヴェリタス エコノミストランキングにランクイン。内外景気動向の分析と金融市場、投資家動向に精通。

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